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TOP LEAGUE 観戦記
 
 
奇跡ならずも、価値ある惜敗

ワールドカップ開催の影響で開幕が遅れ、例年のように中断期間もなく続いたトップリーグも、2月3日レギュラーシーズン最終節、最終日を迎えた。
東京で雪が積もったこの日、東大阪花園ラグビー場では前日から降り続く雨がグラウンドを濡らしていた。

最終日前日の土曜日、福岡博多の森球技場ではサニックス対リコー、コカコーラウエスト(以降CCWRS)対三菱重工相模原の二試合、静岡ヤマハスタジアムでは東芝対ヤマハの一試合が行われた。
福岡では、第一試合でCCWRSが三菱重工相模原に大勝、勝ち点を25まで伸ばし残留が確定。サニックスは自動降格が確定しているリコーに勝ち点0で破れたことで12位がほぼ確定した。一方の静岡、日本人初のプロ選手となった、ヤマハの村田亙選手(40)の引退試合と銘打たれた試合では、村田選手が元所属していた東芝が5トライを奪って快勝し、試合後には両チーム参加の中、盛大なセレモニーで村田選手の偉業を讃えた。

この結果をもって、神戸製鋼のプレーオフ進出の可能性が消滅、IBMは得失点差により11位以上がほぼ確定し、最終日を迎えた。神戸製鋼対IBMの試合前、九州電力がクボタに敗戦したが、7点差以内の敗戦で勝ち点1を獲得。勝ち点21でシーズンを終了し、第二試合の結果を待つ。この時点で、IBMが入替戦に出場することなくトップリーグに残留するためには、勝ち点を2以上獲得することが必須条件となった。

14:00、その条件を選手は知らされているのだろうか。今シーズンの長く厳しかった戦いを締めくくる最終戦のキックオフの笛が鳴らされた。IBMボールのキックオフでスタートしたこの試合、開始直後は両チームが静かに立ち上がる。その後、一進一退の攻防が続く中、6分にIBMラインアウトのミスから神戸製鋼の素早い展開で先制トライを奪われると、ゴールも決まり0-7となる。いやな予感が脳裏をかすめるが、その後のプレーでWTB勝俣のビッグタックルも飛び出すなど、悪い流れを断ち切る力が今日のIBMにはあった。

10分には、敵陣に攻め入り敵陣10m付近で相手ボールラインアウトとなる。このボールを奪いモールを形成すると、22mラインまで一気に押し込みBKに展開、SO加瀬からCTB阪元に繋ぐと、阪元が判断よく相手選手の頭越しにカットパスをWTB道廣へ、そのままインゴールまで走りきり右隅にトライを決める。この後の難しい角度からのコンバージョンキックは惜しくも外れ、5-7となる。その後、一進一退の攻防を繰り広げるが、この辺りから苛立った神戸製鋼のラフプレーが目立ち始めると、両者がもみ合う状況が多く見られた。

この状況に気持ちを高めたIBMは徐々にチームにもまとまりが見え始め、17分には敵陣22m付近で神戸製鋼がペナルティを犯し、ここはPGを選択、FB高(忠)が難なく決めて8-7と逆転に成功する。雨天の中キック合戦の様相を呈してきたこの試合、21分には相手のノータッチキックを阪元がキャッチしポイントを作る。しかし、このポイントはFW選手の戻りが遅く、プレッシャーを受けたパスアウトを余儀なくされた。その出球を加瀬がキックするが、チャージの網にかかってしまう。これを神戸製鋼が冷静に処理し、そのままインゴールで押さえ込まれる。このトライで再び逆転を許しゴールも成功、8-14となる。

30分には神戸製鋼のキックミスからカウンターでロトゥが抜け出し、攻撃中に神戸製鋼がオフサイド。ここでもPGを選択すると、再び高(忠)が確実に決め、11-14と詰め寄る。
しかし、その後のリスタートで自陣でペナルティを取られ、神戸製鋼はタッチに蹴りだす。このラインアウトをしっかりキープされると、モールは崩れたもののその勢いでトライを奪われる。
ここでも確実にゴールを決められ、11-21と差を広げられてしまう。それでも、直後のリスタートからFWが厚みのあるプレッシャーをかける。これに慌てた神戸製鋼がノックオン。このチャンスで再三神戸製鋼のペナルティにチャンスを潰されると、再び両者が苛立ちを強くし始めた。ここで得たペナルティではスクラムを選択。スクラムトライを狙いに行くが、こぼれそうになったボールを山中が拾い上げ、サイドをついたところをターンオーバーされてしまう。惜しくもこの大きなチャンスをものにすることはできなかった。ゴールへのわずかな距離が、想像以上に遠い。その後も自陣まで攻め入られるが、なんとか凌ぎそのまま前半が終了した。

 
 

後半は神戸製鋼ボールでリスタート。前半と同じく静かな立ち上がり。IBMのディフェンスに手惑い神戸も攻めきれない状況が続く。6分、IBMが何とか敵陣に入り込むと、神戸製鋼がペナルティを犯す。このペナルティを前半と同様PGの選択。これを高(忠)が決め、14-21となった。

この試合、IBMは得点直後の失点を奪われる機会が目立つ。この辺りからはディフェンスを整備し、高いメンタルを維持することが求められる。スタンドのサポーターが気持ちを込める。すると再び試合は動き出した。12分、神戸製鋼のペナルティからラインアウトに蹴りだしラインアウトを選択。この日のラインアウトはこれまでの試合と比較し安定感があったが、ここでHO安江とLO佐藤の間で奇襲に出る。キャッチした佐藤からリターンでもらった安江がゴール前に迫ると、そこから出た球をBKに展開。しかしパスはうまく繋がらない。ところが、このプレーで神戸製鋼のディフェンスに穴が開く。こぼれたボールは加瀬の手に。そこでぽっかりと空いたディフェンスラインの裏に加瀬がキックを転がすと、インゴールを転がりこんだボールを勝俣がしっかりとグランディングし、鮮やかなトライ。難しい角度のコンバージョンキックを高(忠)が決め、21-21とついに同点に追いつく。

 

この先、同点のまま一進一退の攻防が続き、少しずつ時計は進む。両チームともチャンスを生かせない時間が続くと、フラストレーションを溜めてしまったのか、またもや密集でエキサイトする場面が増えてくる。このあたりの雰囲気から、次に得点したチームが試合を制するだろうと思われる展開だ。どこで均衡が破れるのか、寒風に負けない熱気がスタンドから沸き立つ。25分、この均衡を破り試合の主導権を奪ったのはIBMではなく神戸製鋼だった。速い展開で連続攻撃を仕掛けると徐々にギャップができてきたIBMディフェンスラインを翻弄、最後はラインを破られど真ん中にトライを許す。ゴールキックも難なく決めて21-28となった。

 

この時点で残り時間15分、7点ビハインド。1トライ1ゴールで同点に追いつける。神戸製鋼有利な状況は変わらないが、ここでの踏ん張りによってはチャンスは大いにある。しかし、その後は神戸製鋼の猛攻に遭い、自陣で連続攻撃を凌ぐ時間帯となった。それでもその猛攻をなんとか凌ぎきると、自陣から果敢に展開しキックも絡めて一気に敵陣ゴール前まで攻め入る。さすがの神戸製鋼もなんとかタッチに蹴りだすのが精一杯。敵陣ゴール前でのIBMボールのラインアウトとなる。

残り7分、まさにこの試合を左右するIBMにとっては最大のチャンス、そして神戸製鋼にとっては最大のピンチである。なんとしてでもこのチャンスを得点に結び付けたい。この試合、最も重要なラインアウトはしっかりとモールを組んだ。モールを押し込むと、そのままインゴールになだれ込む。しかし惜しくもグランディングできずパイルアップ。それでもチャンスは続き、IBMボールの5mスクラムとなる。このスクラムからはバックスに展開、しかし、パスが途中出場のCTB重見に渡ったところで神戸製鋼のビッグタックルに仕留められる。このラックを押さえればチャンスは続いたが、神戸製鋼にターンオーバーを許してしまい、キックで逃れられてしまう。時間と点差、万事休す…。

 

しかし、ここから試合は思わぬ方向へ動き始める。37分には、神戸製鋼FLでNZ出身のブラッキーが負傷により退場。その直後のプレーで途中出場の同じくNZ出身のNO.8クリブが故意の反則で一時退場となる。これで試合終了まで15人対14人の優位な状況が出来上がった。すると、ここで得たペナルティをしっかりとタッチに蹴りだし、ゴール前でラインアウトとなった。

残り時間2分となったところで、どうしても欲しいトライとゴール。ラインアウトはしっかりとキャッチしマイボールをキープしながらゴールラインにゆっくりとしかし力強く迫っていく。

最後はこの試合で幾多のチャンスを作ってきたNO.8ロトゥが右隅に起死回生のトライ。これには堪らずIBM応援席が歓喜に包まれる。

決まれば同点で入替え戦回避が見えてくる、外せばラストチャンスが残っているかどうかという状況で、右隅の難しいコンバージョン。蹴るのはこのチームをトップリーグで2年間、キャプテンとして引っ張ってきた高(忠)。

この日は難しい角度のキックもいくつか決めてきている。スタンドで見守る全てのIBMサポーターがあの光景を思い出す。昨シーズン、同点でも自動降格が決まるという背信の状況で望んだセコム戦、まさかの同点で迎えたロスタイム。高(忠)が決めたあのゴールキックを。

 

強い祈りとともに観客席は静まり返る。
助走を始めキックが放たれると同時にIBM観客席から大きなため息が溢れた。サポーターの祈りも空しく、ボールはポスト左に逸れて行く。しかし、ホーンはまだ鳴っていない。
わずかではあるがチャンスは残されている。

神戸製鋼のキックで再開され、ロトゥがキャッチするとラストワンプレーを告げるホーンが響き渡った。ここから先はペナルティ以外のプレーの中断が、試合の終了を意味する。IBMは神戸製鋼の堅い守りを打ち破るべくわずかに残された力を搾り出すように果敢に攻め続けるが、最後の集中力は歴戦の神戸製鋼に分があったうだ。最後はIBMのミスでこの試合は終了の時を迎えた。

 

試合終了後のスタンドからは、休みなく13試合を戦い続けレギュラーシーズンの最後に最高のゲームを見せてくれた選手たちに対し賞賛の拍手が送られた。

試合の結果、惜しくも及ばず11位となり、トップチャレンジ2(ワールド・セコム・中国電力)を勝ち抜いた1位チームとの入替戦が確定した。試合終了後、スタンドにはあらゆるタラレバが耳をつくように聞こえてきた。しかし、この試合、IBMの選手は試合終了のホイッスルが聞こえるまで高い集中力を維持し、強い精神力で戦い続けた。この強い気持ちで入替戦を戦い、トップリーグで戦ってきたその自信を胸にチャレンジャーを撃破しよう。そして来季、あらゆるタラレバを言わなくて済むような、聞かなくて済むような、本当の意味で強いチームになって、今度こそトップリーグの風になろう。そのためにもまず、1ヶ月後の入替戦までにコンディションを最大限に整え、今季最高のゲームで締めくくってもらいたい。

 
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