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TOP LEAGUE 観戦記
 
 
3点差の僅差ながらトップリーグの座を守り抜く!

つい先日までの真冬の戦いが嘘の様に季節はいつの間にか春へと移り変わった。
プレーオフトーナメントや日本選手権という晴れやかな舞台とは正反対に今日はトップリーグの11位と12位に課された入替戦の日。自動降格を逃れた2チームにとっては今シーズン最後のピンチ。トップチャレンジ出場を果たした2チームにとっては最後のチャンス。
11位IBMはトップチャレンジ2の1位ワールド、12位福岡サニックスはトップチャレンジ1の3位マツダとの一発勝負に臨む。
なるべくしてなったこの順位。
IBMがトップリーグの座を守るには引き分けもしくは勝つしかない。結果を出さなければ前代未聞のトップリーグチーム敗退という汚名がつきまとうこととなる。出来ることなら、IBMが試合開始早々からトップリーグの貫禄を見せつけて完勝してくれることが望ましい。
とはいえワールドもかつてはトップリーグ5位の経験がある名門チーム。
トップイーストの順位決定戦で近鉄に破れトップチャレンジ1への出場権は逃したものの、トップチャレンジ2を勝ち抜き入替戦への出場権を獲得した。既にひと月前にトップリーグへの返り咲きを果たした関西の両雄近鉄ライナーズに続けとばかりに、ワールドも気合い十分でこの日の試合に臨む。

IBMはリーグ戦10位の九州電力の勝点に僅か1点及ばず今日に至る。
最終節の神戸製鋼戦で勝点2点を獲得しなければ入替戦出場という状況で、28対26の2点差まで迫ったものの、結果的に奇跡は起こせなかった。対神戸製鋼戦、ラグビージャーナリストの村上晃一氏のブログであるラグビー愛好日記では、以下の様にコメントされていた。
「日本IBMは最後まで諦めず、神戸製鋼コベルコスティーラーズに対して素晴らしいチャレンジを見せた。これで11位が確定し、入替戦出場となったが、接戦の経験はきっと入替戦に生きるだろう。」
2月3日のトップリーグ最終戦から3月9日の入替戦までの約5週間は待つ側からすると長い期間であったが選手達はしっかりと準備を重ねた。

入替戦を3週間後に控えたある日、八千代台のグラウンドに足を運んだ。
全体練習のほとんどが実戦形式の激しいぶつかり合いにあてられ、場面場面でのチェックが為されている。
5週間の長丁場にもかかわらず緊張感を保ち、激しい練習に前向きに取り組んでいる選手達の姿が頼もしく見えた。

 
 


 

秩父宮ラグビー場の痛々しく枯れた芝生は、今シーズンの数々の激闘を物語る。シーズン開始当初は深い緑で覆われていたグラウンドも、いまでは土色が目立つ。それとは対照的に観客席は鮮やかな青色で染まった。
IBMもワールドもチームカラーは青。両チームのサポーターは青いものを身に着けての応援で選手達を勇気づけた。
晴天ながらグラウンド上の旗は風で大きく揺れている。

13時5分、風下に位置するIBM FB高主将のキックオフで前半開始。

ワールドは身長も体重も大柄な選手を揃えIBMのFW陣が小さく見える。ワールドは個人の突破力には絶対の自信を誇っているのか縦に縦に鋭い攻撃を仕掛けてくる。個々の強さを束ねる司令塔ウェブ。先日発表された日本代表スコッドにも名を連ねNECの名SOヤコを髣髴とさせる多彩な攻撃パターンでIBMのゴール前へと何度も迫る。
IBMは自陣ゴール前の攻撃を何とか凌ぎ相手ゴール前に入り込むも、風上に位置するワールドはSOウェブのロングキック一発で再度IBMゴール前へと舞い戻ってくる。
必死のディフェンスで耐えるIBM。ゴールを背にした両チームの激突は時間の経過とともに激しさを増す。

28分、ワールドのウェブが負傷退場。ワールドはFB由良がSOに回り、CTBにヴァカを投入。ヴァカは身長185p体重115Kg。鎧をまとった様な体格は観客席から見ても威圧感があり脅威。200pのFLラワンガや190cm近いLOマナコの大型FWにCTBヴァカが絡む攻撃は圧巻。タックルするIBM選手を次々と吹き飛ばしながら前進するプレーは観客席からも驚嘆の声が漏れた。IBMは一人で止まらなければ二人三人で上下に同時にタックルに入って動きを止めるしかない。

IBMはたまに敵陣でゴール前に迫るもワールドのタックルは低くて鋭い。攻めながらターンオーバーされて相手ボールになる場面が何度か繰り返された。ワールドも攻め込みながら決定的な場面でノックオン・パスミス・反則を犯し自らチャンスの芽をつむ。ワールドの反則の数は前半だけでも10個に達した。
相手のミスを誘うプレッシャーディフェンスこそがIBMの真骨頂。これはトップリーグで13戦を戦い抜いた賜物か。
前半は耐え凌ぐIBMに対し、攻め続けるも自滅するワールドという印象。このままお互い点数を奪えず0対0で終了。

 

 

 

後半は風下に位置するワールドのキックオフで始まった。
この40分で全てが決まると思うと冷静に試合を見ている余裕は無くなった。その音が聞こえる位に鼓動は高鳴っている。
先制したのはIBM。6分、自陣10mあたりからSO加瀬がパント攻撃。風にボールが流されたのかワールドの選手の間に落ちてIBM側に弾んだ。そのボールに詰めていたWTB道廣が相手より一瞬早く足に引っ掛けて前進。そのボールをFL高がキャッチして相手ディフェンスを引き付けてNO8ロトゥにラストパス。
ロトゥがそのまま突進してゴール下に飛び込んだ。高主将のコンバージョンキックも決まり7対0。
前半から46分目の初得点に観客席も一気にボルテージがあがった。12分には敵陣での相手反則から高主将がPGを決めて10対0。

ここからIBMが一気に勝負を決めにかかることを期待するが、ワールドも慌てない。徹底した縦攻撃で攻め続ける。
15分、その執拗な縦攻撃から敵陣ゴール前でIBMが反則。PGを決めて反撃の狼煙となる3点を獲得。その1分後にはCTBヴァカがIBMディフェンスを突き破ってゴール下にトライ。コンバージョンキックも決めて遂に10対10に追いついた。同点にされたIBMは18分に敵陣22m付近のモールからチャンスをつかむ。
ロトゥが相手ディフェンスの様子を窺いながらドライビングモールの最後尾でボールをコントロール。少しモールが動いた一瞬、モール最後尾から左サイドを一気に突進。最後はロトゥの114Kgの巨漢が宙に舞ってワールド左隅ゴールに飛び込んだ。これで15対10。左隅の難しい位置からのコンバージョンキックも高主将が決めて17対10。
追いつかれても引き離す。

31分IBMのタックルが甘くなったところを突いて、ワールドがIBMゴール左隅にトライ。お返しとばかりに左隅のコンバージョンキックを入れ返し17対17の同点。
3分後の34分、敵陣10m中央付近でワールドが反則。高主将が迷い無くレフェリーにペナルティゴールを狙う意思表示。
高主将がこの日100%のゴールキック成功率を維持させて20対17と3点差のリードを得る。
追いつかれても引き離す。

残り時間は6分。ここから長い長い6分が始まった。同点では昇格できないワールドは5点を得るためにトライにこだわり続ける。自陣ゴール前であろうともキックは封印し簡単に相手にボールを渡すような攻めはしない。縦攻撃にこだわり続けて前進を図る。前半と同様、攻め続けるワールドに耐え凌ぐIBM。長く感じるも時間は刻々と経過し試合終了を告げるホーンが秩父宮ラグビー場に鳴り響く。

プレーが切れれば試合は終わる。攻撃の主導権を持ち続けるワールドは尚も攻め続ける。観客席のお互いのサポーターは気が気でない。何が起こるかわからない。
次の瞬間、レフリーの片手が大きく上がり反則を告げる笛。息を呑む。反則はワールド側。今日の前半から繰り返され、後半は修正していた攻めながら反則を犯して自滅というパターンを最後の最後に露呈した。
そして高主将がペナルティからタッチラインにボールを真横に蹴りだした瞬間にノーサイドのホイッスルが鳴り響く。

 
 

 
 

グラウンドに崩れ落ちるワールドの選手達とは対照的に、勝利の喜びを分かち合うIBMの選手達。両極端な光景が目の前で写し出される。最後はスポーツマンらしく爽やかにお互いの選手全員が握手を交わして健闘を讃えあった。
この日2トライをあげてアタックにディフェンスに存在感を示したロトゥ。普段はあまり感情を表に出さない印象ではあったが、彼の目にも涙が光っていた。

2年続けて入替戦をギリギリのところで制したIBM。一発勝負の怖さを知るのはIBMもワールドも同じ。
ワールドはトップウエストのレギュラーシーズンでは近鉄に勝利しながら順位決定戦で近鉄に敗れた。そして、今日の入替戦でも最後のチャンスを掴むことが出来なかった。ワールドは決定的なトライチャンスを何度も作り出しながらミスを繰り返して自滅。IBMは追いつかれはするものの常に点数では先行し一度たりともリードを許さずに勝利。僅か3点差ではあったが大きな3点差。今シーズン互いが戦ってきた世界の厳しさの差が最後の3点差に繋がったのであろう。

今シーズン、新人選手を多数スタメンに擁して戦ってきたIBM。若い力が来シーズン更に羽ばたくことを期待して来シーズンの開幕を待ちたい。まずは、約5ヶ月近いシーズンの中で傷ついた身体を癒して欲しい。

 

 
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